過去世 No.007 ミラン牧師との対話(1)<看取る人>
(若い頃のミラン神官が現れた。)
白っぽい土壁の狭い自分の部屋に、ベッド、机といす、小さな本棚がある。ベッドには、男性が横たわっている。机の上にはろうそくが灯り、その横で小さな木箱からグレーの石を取り出している。彼はそれを横たわっている男性の胸に当てて怖れを取り除いているようだ。この人は最期を看取る役目があるらしい。
管理人:エゴはないのですか?
ミラン神官:神が私に望まれることに努めると私は望んだ。だから望み通りのことをしている。
管理人:人を看取る時どんな気持ちなのですか?
ミラン神官:人は死ぬ間際に怖れや苦しみに襲われるが、同時に強い愛情や感謝も感じている。それは人間が生まれる時に持っていた純粋な愛の状態に近い。その傍らにいる自分は浄化されているような気持ちになる。
管理人:生い立ちを聞かせてもらえますか?
ミラン神官:両親と弟2人。家は貧しく長男の自分は体が弱かったために9歳になる前にここの神官へあずけられた。仕方ないこととはいえ、恨み、悲しみ、怒り、憎しみ、自己憐憫、自己否定、弟達への嫉妬があった。
そんな私を見て神官が教えてくれた。
「それらの感情はすべて尊いものだ。神から人間に贈られた美しいもの。たとえ汚く見えてもだ。人はそう思わないかもしれない。だが君は今、間違いなく神から贈られた尊い経験の中にいる。この世界に愛でないものなんて何一つ存在しない。全部しっかりと受け取りなさい。ここはそういう所だ。」
未熟な私には難しかった。この世界の不条理がすべて集まっているような所に見えていたから。戦争に傷ついた人、体の不自由な人、病に苦しむ人、死を待つ人、罪を犯した人。親に捨てられた自分もまたその中の一人だと感じていた。
最期の時を迎えようとしている病人が、傍らにいる片腕のない男に向かって感謝の言葉を伝えようとしている。それを見た私は、胸のつかえが取れたような気がした。神官の教えをほんの少し理解出来たのかもしれない。この自分を頼りに生きていこうと思えたんだ。

